生物医化学研究室、食糧に関わる基礎研究(第2報):昆虫などのキチン含有生物がブタの代替飼料となり得ることを提案

キチンは,N-アセチル-D-グルコサミン (GlcNAc) のポリマーで,甲殻類,昆虫,真菌類などのキチン含有生物の主要な構成成分である。ブタは,酸性ほ乳類キチナーゼ (AMCase) を胃で特異的に発現していた。ブタの胃から AMCase を精製し,その酵素学的性質を解析したところ,ブタ AMCase は pH 2.0-4.0 付近で活性が最も高く,pH 7.0 まで活性を保持していた。また,AMCase は,pH 2.0 でペプシン,pH 7.6 でトリプシン・キモトリプシンの強力なプロテアーゼ活性に対し耐性を持っていた。AMCase は,高分子量キチン,ミールワーム幼虫の殻に含まれるキチンを分解し,(GlcNAc)2 を生成した。さらに,ハエの翅のキチン質が,ペプシンとともに,胃の抽出液中の内在性 AMCase によって分解されることを可視化できた。したがって,ブタ AMCase は,胃のみならず,腸における幅広い pH において,プロテアーゼ耐性のキチン分解酵素として働くことが出来る。以上の結果は,キチン含有生物が,持続可能なブタ飼料として利用できる可能性を強く示した。
研究成果_田畑2