化学合成で生物と競い合う
キーワード: 天然物合成、カチオンケミストリー、タンデム環化反応、還元的Sn2'反応、中員環形成
植物や微生物、海洋生物などが産生する有機化合物(天然物)の中には、顕著な生物活性を有し医 薬品として利用されているものがあります。それらの多くはごく微量しか産生されないため、有機合成 による供給が重要になります。当研究室では、新しい有機合成反応を開発し、それらを鍵反応として 利用することにより、複雑な天然物の全合成研究に挑戦しています。
エポキシドの開環反応を利用した鎖状立体制御法を開発し、多くの不斉中心を有する天然物の全合成研究に利用しています。最近、多剤耐性克服活性を有するセコスリキシドの全合成に、世界に先駆け成功しました。また、それによりセコスリキシドの真の絶対立体配置を決定しました。
Revised structure of sekothrixide
Z-アルケンを選択的に合成できる還元的SN2’反応の開発 エポキシ不飽和エステルに対しボラン・エーテル錯体を還元剤として用いることで、ヒドリドのSN2’反応が進行し選択的にZ-アルケンが生成する反応を開発しました。現在、この反応を利用して、ピペステライドBやベンツリシジンの全合成に挑戦しています。
Reductive SN2' reaction with BH3
Venturicidin X
Pipestelide B
5員環選択的プリンス環化反応とフリーデル・クラフツ反応が連続的に進行するタンデム環化反応を開発しました。一度の反応操作で二つの環をいっきに構築することができます。
Tandem Cyclization via Prins and Friedel-Crafts reactions