医薬化学研究室 栄養飢餓選択的にがん細胞を死滅させる新規化合物カルドラゾールを発見

 医薬化学研究室の研究で、沖縄県で採集した海洋シアノバクテリアより、栄養飢餓選択的にがん細胞を死滅させる新規化合物カルドラゾールを発見しました。
 急速に増殖するがん細胞からなる腫瘍組織内部は低栄養状態に陥りやすいため、栄養飢餓状態を標的とした抗がん剤の開発が注目されています。本研究では、沖縄県で採集した海洋シアノバクテリアより新規化合物カルドラゾールを単離し、本化合物にがん細胞に対する栄養飢餓選択的な細胞死誘導活性を見出しました。カルドラゾールは、がん細胞の呼吸を阻害することでがん細胞を死滅させることを明らかにしました。また、その作用ががん細胞内の呼吸鎖複合体Iに対する選択的な阻害によることを明らかにしました。呼吸鎖複合体I は、近年がんの治療標的として注目を集めており、実際に呼吸鎖複合体Iを標的とする化合物は一部のがんに対して治験(臨床試験)が進められています。そのため、今後詳細な評価が必要ですが、今回発見したカルドラゾールは新規抗がん剤開発に応用されることが期待されます。これらの成果をまとめた論文は、2022年6月17日にアメリカ化学会の学術誌Organic Lettersに掲載されました。
 なお、本成果は生命化学科医薬化学研究室と慶應義塾大学末永聖武教授の研究グループとの共同研究の成果をまとめたものになります。

図2

<発表雑誌>雑誌情報: Organic Letters
論文名:Isolation of Caldorazole, a Thiazole-Containing Polyketide with Selective Cytotoxicity under Glucose-Restricted Conditions
DOI: org/10.1021/acs.orglett.2c01566
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.orglett.2c01566
発表者:工学院大学 先進工学部 生命化学科 医薬化学研究室 Osamu Ohno, Arihiro Iwasaki, Kyouhei Same, Chihiro Kudo, Erika Aida, Kazuya Sugiura, Shimpei Sumimoto, Toshiaki Teruya, Etsu Tashiro, Siro Simizu, Kenji Matsuno, Masaya Imoto, and Kiyotake Suenaga