生物医化学研究室、食糧に関わる基礎研究(第3報):動物の食性が胃でのキチン の消化性を決定することを解明

キチンは,N-アセチル-D-グルコサミン (GlcNAc) のポリマーで,甲殻類,昆虫,真菌類などのキチン含有生物の主要な構成成分である。昆虫などのキチン含有生物は高栄養価であるため,新規動物飼料源として提案されてきた。しかし,キチンが長らく食物繊維として見なされてきたため,実用的な飼料化は進んでいない。この論文で我々は,胃組織における Chia mRNA レベルが,主な家畜とペット動物において,その食性によって支配されていることを報告する。Chia mRNA レベルは,ウシ(草食性)とイヌ(肉食性)の胃組織において,マウス,ブタそしてニワトリ(雑食性)と比べて非常に低かった。さらに,大腸菌で発現した組換えウシとイヌ Chia タンパク質のキチナーゼ活性が,雑食動物の Chia タンパク質と比べると,明らかに低かった。これらの結果は,動物の食性が,Chia mRNA 発現レベルとキチナーゼ活性に影響し、キチンの消化性を決めることを示した。以上をまとめると,キチン含有生物は,草食や肉食性には適していないが,ブタやニワトリのような,雑食性動物の飼料として相応しい。

研究成果_田畑3