生物医化学研究室、キチナーゼの新規機能の解明:マウスの酸性ほ乳類キチナーゼは,体細胞の pH 条件下で糖転移活性を示す

マウスの酸性ほ乳類キチナーゼ (AMCase) はキチンを分解する酵素で,pH 2.0 で活性が最も高く,pH 8.0 までその活性を有する。我々は,この研究で,マウスの AMCase が,中性条件下において,糖転移活性を有することを示した。天然キチンおよび人工合成キチン基質を AMCase とpH 2.0 あるいは pH 7.0 の条件下で反応し, その産物を改良Fluorophore-Assisted Carbohydrate Electrophoresis (FACE) 法で解析した。マウス AMCase はすべての pH において,主に,二量体の N-acetyl-D-glucosamine [(GlcNAc)2] を生成し,pH 2.0 と比較して,pH 7.0 でより多くの (GlcNAc)3 を生成した。(GlcNAc)3 の生成メカニズムを各種キチン基質と改良 FACE 法を用いて詳細に解析し,この生成物は,糖転移反応によるものであることを示した。以上の結果は,マウス AMCase が,キチンの加水分解活性と同様に糖転移活性を有し,生体内条件下,肺なので特定の組織で,新しい役割を有する可能性を強く示唆した。
研究成果_脇田2