生物医化学研究室、食糧に関わる基礎研究:ニワトリ酸性キチナーゼの消化器系条件下でのプロテアーゼ耐性から、キチン含有生物がニワトリの代替飼料となり得ることを提案

キチンは,N-アセチル-D-グルコサミン (GlcNAc) のポリマーであり,甲殻類,昆虫,寄生虫,真菌類の構成成分で,地球上に豊富に存在するバイオマスである。これまで,昆虫や真菌類などのキチン含有生物は,新規動物飼料源として提案されてきたが,これらの生物を家畜飼料として用いる上で,キチンの難消化性への懸念が実用化への障壁となっていた。最近,我々は,酸性キチナーゼ (Chia) が,マウスの消化器系でプロテアーゼ耐性の主要な糖質分解酵素として機能することを報告した。しかし,Chia の生理学的な役割は,ニワトリを含めた他の動物では明らかになっていない。今回,我々は,Chia がニワトリ体内でキチン含有生物を分解する消化酵素として機能し得ることを報告する。Chia mRNA はニワトリの腺胃組織で非常に高いレベルで発現していた。また,ニワトリ Chia は,キチナーゼ活性の至適を pH 2.0 に有し,胃の消化酵素ペプシン,腸の消化酵素トリプシン/キモトリプシンに対し優れた耐性を示した。さらに,Chia は,消化器系条件下で,代表的なキチン含有生物であるミールワーム幼虫の殻のキチンを分解し,(GlcNAc)2を生成した。本研究で,キチンのニワトリ体内における消化への懸念が解消され,キチン含有生物をニワトリの飼料として利用できることを提案する。
研究成果_田畑