生物医化学研究室、カニクイザル組織におけるキチナーゼ遺伝子発現解析:キチナーゼ発現は種特異的であることを解明

キチンは,N-アセチル-D-グルコサミン (GlcNAc) のポリマーで,甲殻類,昆虫,真菌類などのキチン含有生物の主要な構成成分である。ほ乳類は,体内においてキチンを合成しないにも関わらず,それを分解する酵素キチナーゼを2種類発現している。両キチナーゼは特定の病態生理学的条件下において大きな役割を果たすと考えられている。カニクイザルは,生化学,薬理学,医学の研究において頻繁に使用される非ヒト霊長類モデルの1つである。我々は,カニクイザルの主要組織におけるキチナーゼ mRNA レベルの解析を行い,ヒトとマウスと比較した。その結果,カニクイザルにおけるキチナーゼ遺伝子の発現は組織特異的であること,種によりキチナーゼ発現は異なるということがわかった。また,mRNA レベルの種間差は酵素活性にも反映されていた。以上のことから,キチナーゼの発現には種特異性があるため,特定の生物においてのキチナーゼに関係する研究の際には,種間でのデータを取り扱い時に注意が必要であることがわかった。

研究成果_上原1