生物資源化学研究室、環境ストレスに応答する単細胞藻類の植物ホルモンの獲得とカロテノイド合成に関する論文を発表

 植物が産生する物質には、生理活性・情報伝達を調節する機能を有し、ストレス応答などに関わる植物ホルモンがある。例えば、アブシシン酸は乾燥ストレスに対して働く植物ホルモンであり、カロテノイドから生合成される。強光や乾燥などのストレス環境下である陸上の岩場や基物の表面上で生活する単細胞藻類(気生微細藻類)には、環境ストレスへの防御機構としてカロテノイドを生合成する代謝系が発達しているものが多い。中でも、気生微細藻類Coelastrella sp. KGU-Y002は、多種類の遊離型・エステル型のカロテノイドを合成することができる。我々は、塩添加培養において、気生微細藻類のストレス応答に関わるアブシシン酸とカロテノイドの生合成に着目し検討した。
 塩(疑乾燥)ストレスにおいて、Coelastrellaは緑色から橙色に変化し、藻細胞のエステル型カロテノイド含有率が塩ストレスによって増加し、特にKCl添加はそのエステル化反応を著しく促進させた。また、この環境下においてアブシシン酸含有量が一過的に増加する現象が認められた。この現象は、高等植物におけるアブシシン酸の増減と類似していることが分かった。したがって、陸上で生活する気生微細藻類はアブシシン酸の生合成経路を獲得し、塩ストレス環境下で産生したアブシシン酸がカロテノイドのエステル化反応を促進させたと考えられる。
研究成果(Saeki)