生物医化学研究室,バイオに関わる基礎研究:蛍光標識した糖の検出法(FACE法)によるキトオリゴ糖の定量法のプロトコールを提案

 キチンは,N-アセチル-D-グルコサミン (GlcNAc) のポリマーである。キチナーゼはキチンを加水分解する酵素である。
 Fluorophore-assisted carbohydrate electrophoresis (FACE) 法は分子を pmol レベルで検出することのできる高感度な技術である。FACE 法を用いると,4-NP-(GlcNAc)2,(GlcNAc)4,コロイダルキチンなどの人工および天然キチン基質からの分解生成物の検出と定量が可能になる。我々のグループは,pH 2.0〜8.0での酵素のキチン分解活性の生化学的評価に一般的に用いられるいくつかの緩衝液の存在下でキトオリゴ糖を分析するために,FACE 法を改良した。本研究では検出条件 (exposure type, precision; sensitivity, high resolution; exposure time, 5 sec) を最適化した。標準曲線を用いて,(GlcNAc)2 を 10 nmol レベルまでのキトオリゴ糖の定量が可能になった。ここで提示したプロトコールを使用すれば,様々なキチナーゼのキチン分解特性を直接比較できる。
 よく研究されている細菌キチナーゼである Serratia marcescens キチナーゼ A (ChiA) とキチナーゼ B (ChiB) はキチン分解において相乗効果があることが,HPLC によって示されている。FACE 法を使用して,天然のキチン基質分解におけるマウスのキトトリオシダーゼ (Chit1) と酸性哺乳類のキチナーゼ (AMCase) の相乗効果の有無を決定した。

 掲載雑誌の MethodsX は Elsevier 社より刊行されている,研究者が自らカスタマイズした実験方法を公開する国際学術雑誌です。この雑誌はOpen Access なので誰でも読むことができます。

<発表雑誌> 雑誌情報: MethodsX.
論文名:Quantification of chitooligosaccharides by FACE method: determination of combinatory effects of mouse chitinases.
DOI: 10.1016/j.mex.2020.100881.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S221501612030100X
発表者:工学院大学 先進工学部 生命化学科 生物医化学研究室 Kimura M, Umeyama T, Wakita S, Okawa K, Sakaguchi M, Matoska V, Bauer PO, Oyama F.