生物医化学研究室 ブタペプシン標品中のキトサン分解活性が、酸性キチナーゼのキチン分解活性の残存が原因であることを解明

ブタペプシン標品中のキトサン分解活性は、酸性キチナーゼのキチン分解活性の残存が原因である

概要:市販品として入手可能なブタペプシン標品は、様々な生物医学的な用途を持つキトオリゴ糖の生産に用いられている。しかし、この活性の理由はよく分かっていない。この論文で我々は、そのキトサン分解活性が、ペプシン標品中の酸性キチナーゼ(Chia)の切断型が有するキチナーゼ活性が残っていることに起因することを示した。Chia は酸安定性で、ペプシン耐性をもつ酵素で、キチンを分解し、N-アセチル-D-グルコサミンの2量体を生成する。我々は、Chia が胃の環境下で、ペプシンによって切断されるが、キチナーゼ活性を保持し、キトオリゴ糖を生成しうることを見出した。完全長タンパク質と同様に、切断型 Chia とペプシン標品は、複数の脱アセチル化度(DD: 69-84%)のキトサンを分解し、完全長 Chia と同等の産物を生成した。その分解効率は、DD-依存的であり、より高い DD においては顕著な減少が見られ、これらのことは、キトサン分解活性がキトサナーゼ活性ではなくキチナーゼ活性によるものであることを示した。我々は、天然または組換え体のブタ Chia が、生物医学的目的のためのキトオリゴ糖の生産に適していることを提案した。

<発表雑誌>
雑誌情報:Sci. Rep. 9, 15609 (2019).
論文名:Residues of acidic chitinase cause chitinolytic activity degrading chitosan in porcine pepsin preparations
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-019-52136-2
発表者:工学院大学 先進工学部 生命化学科 生物医化学研究室
Tabata, E., Wakita, S., Kashimura, A., Sugahara, Y., Matoska, V., Bauer P. O. and Oyama, F.