医薬化学研究室、特殊な構造を有するペプチド医薬品創出のための基盤技術開発に関する論文を発表

 ペプチド医薬品をはじめとする中分子医薬品は、低分子医薬品や抗体医薬品などの利点を併せ持つ新たな創薬シーズとして注目されており、特異的な二次構造を持つ機能性ペプチドが国内外で盛んに開発されている。特に、タンパク質中の二次構造の中でヘリカル構造は、他のタンパク質やDNAなどを認識している重要な構造である。近年、我々は非天然アミノ酸を利用したペプチドのヘリカル構造制御に基づく創薬研究を行っている。一方で、これらのペプチドはその用途ごとに設計・合成しなければならなく、多くの労力と時間が必要であることが多い。そこで我々は、ひとつのヘリカルテンプレートを利用してペプチド上で側鎖に様々な官能基を修飾することができれば、様々な生理機能を付与できると考えた。今回、ヘリカル構造を制御でき、post-modificationによる官能基修飾可能な非天然アミノ酸を設計・合成した。これらのアミノ酸をペプチドに導入し、CDスペクトルによる二次構造解析を行った結果、ヘリカル構造を安定化できることが明らかとなった。さらにペプチド上でのクリック反応によるアミノ酸側鎖の官能基修飾を行った結果、ペプチド内の様々な反応性官能基による影響を受けず、反応はスムーズに進行した。また、側鎖を変換する前後でペプチド二次構造に大きな変化は見られなかった。以上の結果より、本研究において開発した非天然アミノ酸は、ヘリカルテンプレートからの様々な生理活性付与を可能とするものであり、今後のペプチド創薬研究に応用可能である。

研究成果_小林