生物医化学研究室: H128R変異によって、反芻動物の酸性キチナーゼを進化的に活性化できることを明らかにしました

工学院大学先進工学部生命化学科の田畑絵理客員研究員(日本学術振興会特別研究員、PD)と小山文隆教授らの研究グループは、反芻動物の中でもキチンを含まないエサを食べている種(ウシなど)において、酸性キチナーゼ (acidic chitinase, Chia) の機能部位にH128R変異が入り、その酵素の活性が不活性化することを発見しました。これにより、草食性動物におけるChiaの低活性化の原因が解明されました(図左)。さらに、最近の同研究グループの他の結果と合わせると(図左と中央)、ほ乳類の食性や進化を理解する上での重要な知見が得られ、昆虫の家畜飼料利用にもつながる可能性が示唆されます。

PowerPoint プレゼンテーション

図の説明:現在のほ乳類は、食虫性の祖先から進化してきました。雑食性動物では高活性のChiaが合成されていますが、キチンを含まないエサを食べている種ではChiaの機能部位に変異が入り、その酵素の活性が不活性化しています。

要旨(研究概要)はPDFをご覧ください。

<発表雑誌>
雑誌名:iScience
論文名:Evolutionary activation of acidic chitinase in herbivores through the H128R mutation in ruminant livestock
URL : https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(23)01331-7
発表者:工学院大学 先進工学部 生命化学科 生物医化学研究室
Eri Tabata, Ikuto Kobayashi, Takuya Morikawa, Akinori Kashimura, Peter O. Bauer, Fumitaka Oyama