医薬化学研究室 海洋生物より単離したプロスタグランジン類の新規生物活性に関する論文を発表

 医薬化学研究室の研究で、ウネタケと呼ばれる軟体サンゴの一種より単離したプロスタグランジン類に新規抗炎症活性を見出しました。
 リポポリサッカライド(LPS)はグラム陰性菌の外膜の構成成分であり、敗血症等の疾患の原因となります。本研究では、LPSがマウスマクロファージ様細胞株に誘導する炎症性メディエーターである一酸化窒素(NO)の産生を阻害する物質を探索し、その作用機序を解析しました。天然由来サンプルをスクリーニングした結果、沖縄県で採集した軟体サンゴの一種であるウネタケ Lobophytum sp.(下記写真)の抽出液から プロスタグランジンA2をNO産生抑制活性物質として単離しました。作用機序の解析により、プロスタグランジンA2による、LPSが誘導する炎症のシグナル伝達を阻害する新たな機構が明らかにされました。プロスタグランジン類は私達の体内にも存在し、その中には医薬品として私達に恩恵をもたらしているものもあります。今後、詳細な作用機序が明らかになることで、新たな抗炎症物質としての応用が期待されます。これらの成果をまとめた論文は、MDPI社の国際学術誌Marine Drugs電子版に掲載されました。
 なお、本成果は生命化学科卒業の水野瑛夏さんと化学応用学専攻修士課程修了の宮本順一郎君とが中心となり研究した内容をまとめたものになります。

ウネタケ

<発表雑誌>
雑誌情報: Marine Drugs
論文名:Inhibition of Lipopolysaccharide-Induced Inflammatory Signaling by Soft Coral-Derived Prostaglandin A2 in RAW264.7 Cells
DOI: 10.3390/md20050316
URL: https://www.mdpi.com/1660-3397/20/5/316
発表者:Osamu Ohno, Eika Mizuno, Junichiro Miyamoto, Tomoyuki Hoshina, Takuya Sano and Kenji Matsuno