生物医化学研究室 マウスの酵素に関わる基礎研究:キトトリオシダーゼと酸性ほ乳動物キチナーゼのキチン分解特性が異なり,独立して機能し得ることを解明

マウスキトトリオシダーゼと酸性ほ乳類キチナーゼのキチン分解特性の直接比較と相乗効果の決定

概要:キチンは,N-アセチル-D-グルコサミン (GlcNAc) のポリマーであり,甲殻類,昆虫,寄生虫,真菌類の構成成分で,地球上に豊富に存在するバイオマスである。キチナーゼはキチンを加水分解する酵素である。キトトリオシダーゼ (Chit1) と酸性ほ乳類キチナーゼ (AMCase) は、さまざまな慢性炎症性疾患や食物消化に関係している。我々は、比色解析と fluorophore-assisted carbohydrate electrophoresis (FACE) 法を組み合わせ,人工および天然のキチン基質の分解におけるマウス Chit1 と AMCase のキチン分解特性を直接比較し,さらに両酵素の相乗効果の有無を決定した。Chit1 と AMCase は、酸性から中性の条件でキチン分解特性において異なる動態を示した。pH 2.0 では,AMCase の活性は Chit1 の活性よりも高く,良く研究されている細菌キチナーゼの Serratia marcescens キチナーゼ B の活性よりも強いか,もしくは同等であった。異なるキチン基質を使用した場合、分解産物の変化は,AMCase と Chit1 が様々な pH 条件下で異なる性質を持つことを示した。様々なキチン基質に Chit1 と AMCase の両方を作用しても,これらの酵素は相互に干渉せず,細菌キチナーゼで報告されているような相乗効果を示さなかった。我々の結果は,Chit1 と AMCase が生理学的条件下で独立して機能することを示唆した。

<発表雑誌>
雑誌情報: Int J Biol Macromol. 2019, 134:882-890.
論文名:Direct comparison of chitinolytic properties and determination of combinatory effects of mouse chitotriosidase and acidic mammalian chitinase.
DOI:10.1016/j.ijbiomac.2019.05.097
発表者:工学院大学 先進工学部 生命化学科 生物医化学研究室
工学院大学 先進工学部 生命化学科 生物医化学研究室 Kimura M., Umeyama T., Wakita S., Okawa K., Sakaguchi M., Matoska V, Bauer PO, Oyama F.